水戸藩の藩校・弘道館を見学×常陸大宮市でブルーベリーを味わう

 

水戸藩の藩校・弘道館を見学

全国最大規模を誇った水戸藩の藩校

水戸市三の丸の弘道館は、旧水戸藩の第9代藩主・徳川斉昭(なりあき)が1841年に創設した藩校で、全国一の規模を誇りました。儒学や歴史、武芸のほか、医学、蘭学、天文学など幅広い学問を取り入れた、江戸時代の総合大学といえます。日本遺産「近世日本の教育遺産群」の一つにも認定されています。
弘道館事務所主任研究員の小圷のり子さんに案内してもらいました。

江戸時代創建の弘道館

江戸時代創建の弘道館

館内に流れる、凜とした「学びの空気感」を味わって

小圷さんは、「館内に流れる、学びの空気感を味わってほしい」と話します。
弘道館では、約180年前の藩校当時の建物に入ることができます。「正庁(せいちょう)正席の間」や「対試場」は、藩主が臨席して文武の試験が行われた場所。「至善堂(しぜんどう)」は、斉昭の七男で最後の将軍となった徳川慶喜(よしのぶ)が幼い頃に学び、大政奉還後に恭順謹慎生活を送った場所です。正庁と至善堂は、正門とともに重要文化財に指定されています。
弘道館で学んでいたのは藩士とその子弟で、入学年齢は15歳。40歳まで登館の義務がありますが、卒業という制度はなく、生涯学習のような場でした。学生の人数はおよそ1000人と推定されています。
学生たちは、どのような志をもって文武に励んでいたのでしょうか。小圷さんは、学生たちの姿に思いをはせながら館内を歩いてみることをすすめます。館内の静けさの中に身を置いていると、「心が落ち着き、自分と向き合える。大切なことに気づかせてもらうことも多い」と話します。水戸の梅まつりの時期に訪れるのもいいですが、特にオフシーズンは藩校当時の凜とした空気感を体感できるそうです。
館内から見える庭も趣があります。庭には、斉昭が愛した多品種の梅や、斉昭夫人ゆかりの左近の桜、夏の日差しに映える百日紅の古木などが植えられています。小圷さんは、「館内の、日の光が注ぐ廊下から、あるいは部屋の畳の上に正座して、斉昭や慶喜が眺めたであろう四季折々の景色を堪能してください」と話します。

「館内に入ると、藩校らしい凜とした空気を感じ、自然と背筋が伸びるんです」と、小圷さん

至善堂

至善堂

日差しが入った廊下

日差しが入った廊下

「医学館」開設180年記念の企画展開催中

館内の展示室では、2024年6月30日まで、企画展「医学館開設180年記念 水戸藩の医学と弘道館医学館」が開かれています。同年3月31日までが「第1期」で、テーマは「疫病との闘い 種痘(しゅとう)とコレラ予防」。4月1日〜6月30日までは「第2期」で、「医学館の製薬事業と水戸藩の薬草」をテーマに展示が行われます。
水戸藩の医学は、2代藩主・徳川光圀(みつくに)の奨励で盛んになり、藩医・原南陽(はら・なんよう)の実証的医学の導入で大きな進歩を遂げました。斉昭は、その成果を発展させ、藩校弘道館に医学館を設け、藩内の医学教育・医療機関のセンターにしたのです。
医学館では、医学教育のほか、製薬、治療、予防医療、蘭学研究など、様々な活動が行われていました。特に、当時大流行した痘瘡(天然痘)から領民を救うための種痘においては、中心的な役割を果たしました。小圷さんは、「斉昭や医学館教授の本間玄調(ほんま・げんちょう)、地方の郷医たちの懸命な努力で種痘が普及し、多くの命が救われました。先人の尽力に心を寄せて見ていただけたら」と、話しています。

豊富な資料を展示している企画展の会場

豊富な資料を展示している企画展の会場

館内にある「ハート」を探そう

弘道館のユニークな楽しみ方として、「ハート型の模様を探しながら、見学してみて」と、小圷さん。江戸時代の建物なのに、ハート型の模様なんてあるのだろうか・・・と探してみると、廊下の柱にある釘隠しの模様の一部に、小さなハート型を発見!!
このハート型は、実は日本古来から伝わる「猪目(いのめ)」という模様。魔除けや招福の意味があり、伝統的な建築のほか、刀装具などに透かし技法として使われることがあるといいます。「江戸時代の模様には、装飾的な美しさとともに人々の思いが込められているのですね」と、小圷さん。

「こんなところにハート型が!」と指さす小圷さん

「こんなところにハート型が!」と指さす小圷さん

釘隠しの拡大写真

釘隠しの拡大写真

瓦の拡大写真

瓦の拡大写真

「偕楽園」と一対になっている

弘道館には、対になっている施設があります。同じ水戸市内にある偕楽園です。
斉昭は、優れた人材の育成を目指して弘道館を設けた翌年に、偕楽園を開きました。文武修業の場である弘道館に対して、偕楽園は、修業の余暇に心身を休める場として、相互に補完しあう一対の教育施設として構想されたのです。
偕楽園創設の理念を記した「偕楽園記」には、「一張一弛(いっちょういっし)」というキーワードがあります。「一張一弛」は、「礼記」にある孔子の言葉で、厳しいだけでなく、時には緩めて楽しませることも大切だという教えです。「斉昭はバランスを重視していました。弘道館を見学したあとは、偕楽園にも訪れて、一張一弛を体感してください」と、小圷さんはすすめています。

施設基本情報

弘道館
所在地: 水戸市三の丸1−6−29
観覧時間: 9:00〜17:00(10月1日〜2月19日は16:30まで。梅まつり期間中は原則17:00まで)
休館日: 12月29日〜31日
観覧料: 大人400円、小人・満70歳以上200円
電話: 029-231-4725(弘道館事務所)

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