筑波山の東側山麓にある「嶋村観光果樹園」(石岡市小幡)は、10月中旬からのみかんシーズンには、県内外の大勢の人たちでにぎわいます。魅力の1つは、山のふもとに広がるみかん畑で、のびのびとみかん狩りを楽しめること。もう一つは、収穫するみかんのおいしさです。
「甘酸っぱくて味が濃いと、多くのお客さんに驚かれます。果汁100パーセントのみかんジュースを食べている感覚」と、同園の3代目、嶋村征彦さんは話します。
みかんの産地と言えば、静岡、和歌山、四国などで、「茨城でみかんが成るの?」と驚く人も多いでしょう。実際、気象条件で言えば、茨城はみかん向きではないそうです。そんな茨城で、同果樹園は、開園から60年近い歴史があります。それができているのは、筑波山麓の地形などがつくりだす大気の特殊な現象「逆転層」のせいだといいます。逆転層が起こると、高度の低いところより高いところの方が温かいという、不思議な状況が生まれるそうです。
同果樹園は標高100〜200メートル地点にあります。嶋村さんは、「うちの周りでは、霜柱をみることはほとんどない。でも、山を下るとガチガチに霜柱が立っていることもある」と話します。同果樹園の周辺には5軒ほどの果樹園がみかんを栽培しています。過去には、もっと多くの果樹園が挑戦したけれど、うまくいかなかったそうです。5軒だけが逆転層の恩恵を受けることができたということだと考えられます。
同果樹園のみかん畑の広さは約3500平方メートルです。山麓のゆるやかな斜面にみかんの木々が並んでいます。種類は温州みかんで、「日南(ひな)の姫」「宮川早生」など4種類ほどがあります。みかん狩りの最中は、自然の山の中を探索しているような気分に。山裾の方に振り返れば、石岡市の町並みが広がります。
みかんの味が濃いのは、みかんの実を木に付けたまま完熟させる樹上完熟という栽培方法を採用しているためです。同果樹園は、みかんの栽培規模が小さいため、市場に出荷はしていません。市場に出すとなると、完熟前に収穫して、消費者に届くころに完熟させるようにする必要があります。本来の姿であるはずの樹上完熟を採用することが難しいのです。本来の姿の方が、味が濃くなるというのは想像しやすいと思います。
みかんの収穫は、手で十分に可能だそうです。実につながる枝をつまんでくるくると3、4回まわせば採れるそうです。幼児でもすぐにコツをつかめるといいます。
嶋村さんは、お客さんたちに、「色つやが良くて、小さなみかんがおいしいよ」とアドバイスをするそうです。小さなみかんはおいしさが凝縮しているのだといいます。「種類はもちろん、木によってもみかんの味が違う。いろいろ食べて、自分の一番を探してみて」と、嶋村さん。
所在地: 石岡市小幡1977−1
電話: 0299-42-2766(時期によっては出られない場合もあります)
みかん狩り
期間=10月中旬〜11月下旬(気候によって変わることがあります)
料金=2時間食べ放題で、中学生以上600円、3歳〜小学生500円
持ち帰りは1キロ400円(10個前後)
時間=午前9時〜午後3時